柏レイソルとバルセロナ
先日のガンバ大阪戦勝利後の、胸につかえていた不満感。
あえてその理由を突き詰めて考えたわけではないが、やはりその不満の元はレイソルらしいサッカーが具現できなかったことにあると感じている。
思い返せば東京ヴェルディ戦。
あれは今季観戦したゲームでは最高のゲームであった。
大量得点で気安くゲームを観戦できたという側面もあっただろう、しかし、それを抜きにしても、あのゲームは最高であったのだ。
では何が、そこまで最高のゲームと賞賛できる要因であったかといえば、一言でいえば、「美しいサッカー」であったからだと断言できる。
移籍後初スタメンに名を連ねたアレックスを先頭に、ピッチを大きく使い、ポジションは目まぐるしく変わりつつ攻めあがる姿は自由と調和に彩られていたからだ。
浦和戦だってその姿は見て取れた。
ヴェルディ戦ほど自由に中盤を蹂躙することは出来なかったが、ポポのチェイシングから始まるプレスは確実にDFラインの押上を可能にし、ボールを奪うやスペースを目指し駆け上がるレイソル戦士の躍動感に胸の鼓動は高まったのだ。
勝つに越したことはない。
J2に残留できるに越したことはない。
だが、多分狂人の胸中にはそれを凌駕するほど美しいサッカーへの憧れと期待がある。
J2に陥落し、クラブへの不信からか数多の選手がレイソルを去った。
陥落直後は「1年でJ1に戻る」と公言していた選手が数日後には発言を翻す。
あの時レイソルの歴史において、第何章かは分からないが確実に一幕が降りた感がある。
そして石崎監督の招聘が決まった。
石崎監督にまつわる伝説を少なからず知る狂人には、その発表は決して喜ばしいものではなかった。
あの時は確実に1年でJ1に復帰することが、レイソルを応援するモチベーションであったからだ。
J2の長いシーズンが開幕する。
日立台にはJ1の終わりより沢山のサポがスタンドを埋めた。
モチベーションは狂人と一緒であっただろう。
そしてそのモチベーションの表現は岡山劇場の良質なパフォーマンスとともにサポによって発露された。
しかし長いJ2のシーズンを日立台で戦いながら、狂人にはもう一つの興奮が生まれていた。
フランサを中心とする、あの美しいサッカーである。
記憶力に乏しい狂人なので、相手チームの名も覚えていないが、フランサがジャンプしながらヘッドで落としたボールにディエゴが頭から突っ込んでゴールを奪った得点シーンは、いまも目に付いて離れない。
あのプレーはワールドクラスのプレーである。
そのプレーが、歴史の浅いJリーグで、さらに階級の低いJ2のカテゴリーで、さらに1万2千人程度しか収容できない日立台で間近に見られたのだ。
あの時、狂人は紛れもなくレイソルのサッカーに惚れた。
そしてそのサッカーを具現せしめた石崎監督に惚れたのである。
確か石崎監督は言っていた。
「無理して1年でJ1に上がろうとは思っていなかった。J1に上がっても通用するサッカーをやりたい」と。
そのときJ2の首位には横浜FCが立っていたように思う。
ガチガチに守ってカウンター主体のサッカーだ。
だがJ2を勝ち上がるにはそうしたサッカーが最も適している、といった発言もどこかで読んだ。
J1に昇格するのが優先されるべきか、それとも美しいサッカーか?
結局は美しいサッカーを継続しつつ、最終戦でJ1に昇格という結果を伴ってシーズンは終了した。
J1昇格後の怒涛の連勝は決してフラグではなかった。
ディエゴの退団という不運があったが、J2から継続していた石崎レイソルの美しいサッカーの土台はそのまま残ったからだ。
バルセロナのようにスペクタルで、見るものを魅了しつつ勝利するサッカー。
仮にクライフ氏が日本代表監督に就任するようなことがあれば、土台はレイソルのサッカーになるだろう。
※決して絵空事ではなくクライフ氏に日本代表監督を要請して断られたことがあったらしい。
浦和レッズは強い。ガンバ大阪も強い。
そして日本のJリーグを牽引するチームから多数の代表選手が選出されることも理解は出来る。
だが一時期、欧州チャンピオンズ・リーグでことごとくイタリア勢の敗退が続いた時期があった。
カテナチオと称される守りに重きを置いた戦術がイタリアの伝統であった。
その伝統に彩られたセリエAのチームが、攻撃サッカーの前にことごとく屈していたのである。
浦和レッズは強い。ガンバ大阪も強い。
しかし美しいサッカーだとはどうしても思えない。
※高原がスタメンから離れ田中達也がスタメン出場したFC東京戦は美しかったが…。
浦和レッズは強い。ガンバ大阪も強い。
しかしゴールに結びつくまでの過程においてため息がでるほど美しいサッカーとは到底思えない。
ゴール前に圧力を掛け、個人能力に頼った得点。
セットプレーやCKで得点を挙げる。
勝てばいいというのであれば、勝利という結果をあげるチームは最良のチームであろう。
だが、あくまでも狂人にとって、あの美しいサッカーを間近で目撃した高揚感からは逃れられない。
オシム監督が日本代表監督に就任した時、世界で勝つにはどうしたら勝てるかという命題に即して選出された選手は、見事にJリーグの文化を逸脱した中から見出されたものであった。
岡田監督の日本代表は現在のJリーグ文化にどっぷりと浸かった中からの選出にしか見えない。










